【作詞入門】アイドル曲の歌詞の作り方。ロック・パンク編
ロックの定義とは何でしょうか。
QUEENの楽曲はロックなのでしょうか。
東京事変はロックバントではないのでしょうか。
ロックはメタルとは全く違うものなのでしょうか。
ガールズロックとパンクロックは相いれないモノなのでしょうか。
そもそも音楽にジャンル分けは必要でしょうか。
ロックやメタルの精神論は奥深く、哲学的アプローチから聴き解こうとする強者もいるくらいです。
今回は魂揺さぶるアイドルとロックの関係に注目してみましょう。
お手本神曲:絶叫する60度|三年days
ロックって何?
TSUTAYAのDVDコーナーは「アクション」とか「サスペンス」とか、時には「名作コーナー」などのジャンルに分けられています。
個人的に「これが名作?」と首をかしげたくなるような作品が並んでいたりして、特に青筋を立てるようなこともしませんが、これだけジャンルが細分化された世の中、分類が常に作品を検索する手助けにはなっていないのだろうとは思います。
「ロックって何?」と、かつてはロック少年であった、そして今はメタラーである自分が、アイドルとロックの接点を探すにあたり、いろいろと資料をあさったり、ネットを検索したりし、何やかんやと反省させられつつも、ここ一ヶ月とても充実した時間を得ることができました。
で、出た結果が「アイドルとロックって分かんねーなー」でした。
そんな論文もありませんでした、当たり前ですね。
「このテーマじゃ何も書けないのかな」といったんは違うテーマで書き進めていたのでしたが、やはりどうしても取り上げたい楽曲が2曲あり思い切って書くことにしました。
私のたどり着いた小さな一つの結論として「ロックは単なる音符遊びや言葉慰みではない」ということ。
そして「時代の凝結力としての存在である」ということです。
絶叫したい衝動
自分なりのロックの要素をここで少し分類します。
ここで定義するロックは個々の思いを「ロック」という言葉に重ね合せていただければと思います。
こうであって欲しいと自分が思うロックのイメージで結構です。
- 楽曲がロック ボンジョビとか氷室京介とか
- 風貌がロック キッスとか宇崎竜童とか
- 歌唱がロック マーク・ボランとか大友康平とか
- 歌詞がロック ニルヴァーナとか椎名林檎とか
- 生き方そのものがロック ミック・ジャガーとか矢沢永吉とか
個々の思いですので「全然違うじゃねえ―か」のご叱咤(しった)はそのままお飲み込みくだされば幸いです。
実際にはいろんな要素が絡み合って、人格なり、ミュージシャンとしてのパワーポイントが形成されています。
歌詞から見ると伝統的な「闇を切り裂け、鎖を千切れ」系のものが今でも形を変えその根底に脈打っています。
一つの言葉をどこまで抱えられるか、その重さもロックの要素となります。
最近のロックは小難しいことも歌い始めています。
歌詞に展開を求めた所も、ビートやメロディの展開がやや伸び打ちした証ともなりましょうか。
抵抗心、猜疑心(さいぎしん)、また大人たちへ反抗、既存体制の打破、反逆。
自由を求められるだけ求め、自由になったらなったで今度は自由から逃れようとしています。
反戦歌を静々と歌うか、怒鳴り散らすかの違いはあれど、叫びたい衝動は必ず持ち合わせています。
己自身を追及するまなざしを持っているかどうかもロックの重要なファクターです。
前置きが長くなりましたが、アイドルとロックは相いれないものでしょうか。
アイドルの呼称を卑下する人もいますが、私はアイドルをヒラヒラしたスカートをはいて歌を歌う少女たちの総称ではなく「アイドル=みんなが憧れる対称」と解釈しています。
本田圭佑はサッカー少年のアイドルであり、日ハムの大谷君は野球少年のアイドルであるはずです。
絶叫する60度をアイドルだと言えばいい気がしない人もいると思いますが、近い将来カリスマロッカーとなるだろう彼女たちからすれば、呼び方・呼ばれ方なんかを気にする器でもないように思えます。
彼女たちの活動は楽曲も、風貌も、歌唱も、歌詞もどれもロックにあふれています。
まだ少ない楽曲の全てにインパクトや詩情あり、さらに多くの人を引き付け始めようとしています。
感情の母体として
人生最後の十年と引き換えに、またこの三年が欲しい
詩人や作詞家、物書きの解釈はあまりにも詩的過ぎて、時に活字をそのままの意味で受け入れられない時があります。
思いの深さ、重さはこのメロに添うように乗ります。この楽曲のメインともなる歌詞です。
僕は君を傷つけていた 君も僕を傷つけていた
素直な歌詞が緩やかに歌われる時、ビートに叩きつけられる時、それぞれの顔を見せて歌詞が色を変えます。
活字が放射する意味の膨らみをアーティストがうまく歌いこなしています。
君と出した答えとは 違う答えがあるのならば
それを見つけた時に 僕らきっと大人になっていく
「僕らは大人になっていく系」とひとくくりにできるくらい思春期の青年青女が「大人になっていく」歌詞はたくさんありますが、この「君と出した答え~」のフレーズはとても詩情あり、それ以後の青い措辞の重さを感じさせないです。
二番にも
僕はきっと大人になれるだろう
とのフレーズもありますが、くどさなく、切なさをうまく重ねます。
楽曲のバランスも聴後感も良く、これがロックの力なのだと思いました。
願った夢がかなわなくても また夢を見て欲しいから
書けば書くほどただ褒めるだけになってしまいそうなのでこの辺で止めますが、この楽曲の歌詞は大人の冷めた部分、子どもたちの背伸びした部分が混ざる曖昧な意識をグッと鷲掴み(わしづかみ)にしている、ある種、複雑な感情の母体を持っていると言えるのではないでしょうか。
時代の凝結力としての存在、それを彼女たちに感じて仕方がないのです。