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短期間で演奏力を飛躍的に向上させる、とっておきの方法
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短期間で演奏力を飛躍的に向上させる、とっておきの方法

そんな魔法のような方法が本当にあるのか?

眉唾に思われても仕方のないことだと思います。

誤解のないように表現を変えますと、基礎的な演奏テクニックの話ではありません。

基礎的な演奏テクニックは簡単に身に付くものではなく、「費やした時間」と「効果的な練習方法」の乗算によってのみ獲得できるものだと考えています。

ここでの話は「演奏能力」についての話です。

以下、私の経験を元にこのとっておきの方法をご説明したいと思います。

とあるセッションライブで

ライブスポットラグでは時々、京都のバンドマン達を集めたセッションライブが行われます。

お題は、「キャロル・キング」であったり、「紅白歌合戦」であったり様々ですが、5年くらい前に「ジェフ・ベック祭り」が企画され、私もギタリストとしてお声掛けいただきました。

ジェフ・ベックは、さすがに「ブロウ・バイ・ブロウ」や「ワイヤード」あたりは聴いていましたが、それほど好きだった訳ではなく、当時インストバンドをやっていたので「多分ジェフ・ベック好きでしょ?」と思われて誘っていただいたのかと思います。

そういうセッションに誘われたのが初めてでとても嬉しく、二つ返事で出演の話が決まりました。

この時私は、とんでもない選択をしていたことに、全く気づいていませんでした。

ギタリストは他にも2人いて、他はベース、ドラム、キーボード、そして数曲歌ものもあったのでゲスト的にヴォーカルの編成。

リハは本番までわずか2回、しかしまぁ何とかなるでしょう。

軽い気持ちで臨んだのですが、1回目のリハでそんな気持ちは雲の彼方にふっとんでしまいました。

1回目のリハ(本番2週間前)

ギタリストが3人いるので、ギター1人でやる曲、2人でやる曲、3人全員でやる曲、それぞれ振って、大体一人7曲くらいが担当です。

共演のギタリスト2人は私よりずっとキャリアも長く、一人はジャズからロックまでこなせる強烈なプレイヤー、もう一人は普段はメタルバンドをされているヴァン・ヘイレンのようなギターを弾く方。

私はライオンと虎のいる檻に投げ込まれた子羊のようなものでした。

一応やる曲は練習してはいましたが、3人で演奏する曲はXタイムで各ギタリストのソロ回しもあります。

素晴らしい演奏をする二人に対し、私はもうケチョンケチョンでした。

「まずい、このままではただライブで醜態をさらすだけだ。。何とかせねば。。」強烈に、そう思わされました。

それからひたすら、基礎練習を繰り返し、2回目のリハを迎えます。

2回目のリハ(本番1週間前)

2回目のリハでは、初顔合わせの初回とは違い緊張も少なかったですが、やはりあまりいい演奏ができませんでした。

そりゃそうです。

共演のギタリストはこれまで私以上に何度も修羅場をくぐり、技術も知識も豊富に持つ方です。

ブッキングマネージャからも、「本番大丈夫か?」と心配される始末。。

私は一旦頭をリセットし、あと1週間で何ができるか、ひたすら考えました。

本番までの1週間

自分が出来ることの洗い直し

まず、いくら頑張っても敵わないのは明白なので、自分は自分のスタイルで出来る限りのことをしよう、そう開き直りました。

自分のスタイルとは何か、私にとってはペンタトニックスケールを中心としたオーソドックスなスタイル、それを中心に据えました。

その範囲で持っているカード、それが何なのか確認し、数は少ないけれど組み合わせることでバリエーションを増やしました。

例えば、「半音下からしゃくり上げてのトリル」であったり、「同じ運指で半音ずつずらして上げていく」であったり、「スケールトーンを中心とした1~3弦での連続スウィープ」であったり、「5弦開放弦をベースに5弦上のノートを交えていく」であったり。

とにかく自分のできるテクニック内で何ができるかを、洗いざらいやってみました。

ソロパートのイメージ

いきなり「はい、今から5分間ソロ引き続けて」と言われて何も出て来なかったら困るので、イメージトレーニングを繰り返しました。

「前半はロングトーン中心に入って、途中からリフっぽい単音フレーズに変えて行く。

中盤はミドルレンジでの速弾きで盛り上げていって、最後は高音でねちっこくチョーキングで終えよう」例えばそんな感じです。

あと、ギターを弾いているうちに、「あ、このフレーズ面白いし、どこかで混ぜてみよう」というリックが思いついたら、本番本当に出て来るか分からないですが、ストックしておきました。

本番での集中力

そして迎えた本番。

正直どこまでできるか分かりませんでしたが、当日はなんだかすっきりした気分で挑めました。

本番前リハもほぼ通したのですが、驚くことにメンバーの音も自分の音もはっきり聴こえるのです。

おそらく集中力が相当に高まっていたのだと思いますが、「そう来はるなら僕はこういこう!」「ソロの掛け合い、ここで次の構成いきましょうか」そういったことが、アイ・コンタクトなしで分かったのです。

「次このノート、フレーズを弾けばばっちりハマる」それも感覚的に分かりました。

そして、いい演奏が出来ている時、たまに「時間がゆっくり進んでいる」ような感覚になることがあります。

この日そんな感覚を初めて経験し、またソロプレイ中丹田が熱くなる、そんな話を先輩ミュージシャンから聴いていましたが、本当に熱くなる経験をこれも初めてしました。

終わってから

共演のミュージシャンからも、「今日めっちゃ良かったな!本番が一番良かったで!」とおっしゃっていただき、ブッキングマネージャからも「リハではどうなることかと思ったけど、なんとか本番いけたな!」とおっしゃっていただけました。

私も自分のバンドで書き譜のソロなんかはもちろん弾いていましたが、ライブで尺を決めないアドリブソロをとるのは初めて。

その楽しさ・チャレンジ性に完全虜になり、以後自分のバンドのライブでは必ず1曲、尺決めないアドリブソロパートを演奏するようになりました。

この日の演奏メンバーとは1年後くらいに、今度は「三大ギタリスト祭り」として、また共演させていただくことになります。

短期間で演奏力を向上するためにこのライブで得た教訓

私にとっては、本当に演奏能力を伸ばす機会を与えてくれた、忘れられないライブとなりました。

その時思ったことが、「人は到底自分に出来るとは思えないような無茶振りをされ、なんとかそれを達成したとき、飛躍的に成長する」ということです。

これは音楽以外でも、これまでの人生で何度か体験したことです。

例えば、何年か前PHPでとあるサイトを作成せよ、との仕事を振られたことがあります。

PHPなど全く知識もなく、何から手を付ければ目的が達成できるのかすら分からなかったのですが、最終的には作れてしまったのです。

人間って、やればできるもんだと思いました(笑)。

私がこのライブで成長できたのは、

この2点が大きかったと思います。

皆さんも、自分が共演していいんだろうかと思うような、優れたプレイヤーと共演するチャンスもあると思います。

「畏れ多いです」と避けてしまいがちだとは思いますが、是非勇気を出して・胸を借りてチャレンジしてみてください。

恥ずかしい思いもたくさんすると思います。

惨めな気持ちにもなると思います。

しかしその先には、きっと経験したことのないような飛躍的な成長が待っています。

ライタープロフィール

平田 浩康

ライブスポットラグ

平田 浩康

Live Spot RAGの平田浩康です。

15歳の時、音楽特にロックのカッコ良さに痺れギターとバンドを始めました。

生まれ故郷の高知県は、ライブハウスやコンサート会場も少なく生の音楽に触れる機会が少ない、当時は情報源も雑誌やCD、VHSビデオ(!?)という時代でしたが、音楽というとてもキラキラしたものに魅了され、勉強そっちのけでギターと音楽を楽しむ毎日でした。

大学進学から京都に移住し、大学では軽音楽部を卒業(笑)。

それまでは邦楽ロックや洋楽ハードロックを中心に聴いていましたが、先輩や同期から世の中にはもっとたくさんの音楽があることを知らされ、今では「いいな」と思えるものはジャンル隔てなく聴いております。

大学卒業後にRAGに入社、約6年のオフィスや約10年の音楽スタジオを経て、現在は創業39年の老舗Live Spot RAGにて勤務、主にプロモーション業務を担当しております。

日本トップミュージシャン達が奏でる「本物の音楽」に触れ、お客様に届けることで、あらためて音楽の煌めきを実感する日々です。

今でもギター、バンドはゆるく継続しており近年は今更ながら歌も歌ってみたりしています。

もうすっかりおっさんになってはしまいましたが、あの頃「音楽に描いた夢の向こう側」を、今後もみなさんと追っていければと思っています。

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